フラーティクルの抗酸化作用

紫外線や大気汚染、体内の代謝活動によって生じる活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)は、肌のバリア機能を低下させ、乾燥やくすみ、弾力の低下などに影響を与えることが知られています。

活性酸素(ROS)の種類

  • スーパーオキシドラジカル(O₂•⁻):細胞のエネルギー代謝や酵素反応で生じる。単体での酸化力は弱いが、他のROSの起点になる。
  • 過酸化水素(H₂O₂):スーパーオキシドラジカルから変化して生じる。反応性はそれほど高くないが、金属イオンや光により容易に分解し、ヒドロキシラジカルを生成する。
  • 一重項酸素(¹O₂):紫外線などによって、体内の色素が機能して発生する。脂質などの酸化を引き起こす。
  • ヒドロキシラジカル(•OH):過酸化水素への紫外線の照射や、フェントン反応によって生成される。最も反応性が高く、生成直後に周囲の分子を酸化する。拡散距離はごく短い。

これらのROSは互いに変化しながら連鎖反応を起こし、脂質過酸化やDNA損傷、コラーゲン分解酵素(MMP)の活性化などにつながることが報告されています。この酸化連鎖が、光老化や酸化ストレスによる肌ダメージを促します。

ヒドロキシラジカルの特性と酸化影響

ヒドロキシラジカル(•OH)は、不対電子を持つフリーラジカルであり、ROSの中で最も反応性が高く、肌内部の生体分子を瞬時に酸化する「最終的な酸化因子」として注目されています。生体内では、一般的に体内生成した過酸化水素と金属イオンの反応によって発生すると考えられています。生成と同時に反応が起こるため、寿命は数ナノ秒以下と極めて短く、拡散距離も数ナノメートル程度とされています。このため、発生したその場で近くの分子を酸化し、皮膚構造の変化を引き起こします。

ヒドロキシラジカルによる主な影響は、以下となります。

  • 脂質過酸化の開始(細胞膜脂質の酸化)
  • コラーゲン・エラスチン線維の酸化変性
  • 角質層のバリア機能低下
  • DNAの酸化(8-OHdG生成)

これらの酸化反応が蓄積すると、肌のうるおいや弾力が失われ、外的刺激への抵抗力も低下します。

フラーレンとその抗酸化特性

フラーレン(C₆₀)は、炭素原子が球状に結合した構造を持ち、電子を受け取ることでラジカルを安定化させる性質を持ちます。この特性から、ROSを効果的に捕捉する素材として研究が進められてきました。フラーレン(C₆₀)はビタミンCを凌駕する抗酸化能を有することが知られてあり、化粧品など幅広い分野で応用されています。

フラーレンは水に溶けにくく、化粧品のような水系処方では扱いが難しいという課題がありました。そこで開発されたのが、株式会社ビオシスが製造するフラーレン(C60)含有の化粧品原料「フラーティクル」です。

フラーティクルは、フラーレンをγ-シクロデキストリンの内側に包み込むことで外側を親水化し、水中での安定分散を可能にしています。社内評価でも、フラーティクル水溶液がヒドロキシラジカル(•OH)に対して高い消去活性(トマトの数倍)を示す結果が確認されています。

フラーティクルは、γ-シクロデキストリンによる包接構造により、水系処方に組み込みやすく、化粧水・乳液・UVケア製品など幅広いカテゴリーで活用が可能です。肌を酸化ストレスから守り、うるおいとすこやかさを保つための整肌・保護成分として、スキンケア製品に使用されています。

【参考文献】

  • Halliwell, B., Gutteridge, J.M.C. Free Radicals in Biology and Medicine, 5th ed., Oxford Univ. Press, 2015.
  • Fisher, G.J. et al. N. Engl. J. Med., 2002.
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  • Buettner, G.R. Arch. Biochem. Biophys., 1993.
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