波長領域で10-400 nmに位置する紫外線(Ultra Violet: UV)は、可視域を外れているため視認不可な電磁波の一種である。可視光とX線の間にあるこの紫外線は、可視光より高エネルギーのため肌などの人体に表面に悪影響を与える一方、X線のように人体内部への影響は少ないという特徴を有している。
紫外線の肌への影響
紫外線は、その波長で200-400 nmの近紫外線と10-200 nmの遠紫外線に大別される。より我々の身の回りの分類とすると、315-400 nmの長波長紫外線(UVA)・280-315 nmの中波長紫外線(UVB)・200-280 nmの深紫外線(UVC)となる。各紫外線域の人体への影響を下記に列挙する。
- UVA: 角質層内部まで到達して皮膚へのダメージ、シワ・タルミといった光老化の原因
- UVB: 肌表層で日焼けや炎症を起こし、メラニン増加によるシミ・そばかすを誘発
- UVC: 肌の直接的な痛み
UVAは長時間浴びた際に肌などに影響があり、UVBは肌に日焼けや皮膚がんの原因といった影響が考えられ、両方を防御することが望ましい。一方、UVCはほとんどがオゾン層で吸収される、地表まで到達しないため現状は緊急的な処置は必要ないと考えられてきたが、近年地球上のオゾン層破壊の進行により紫外線量が増えており、年間を通してのUVA・UVBへのさらなる肌防御とUVCに対する対処も考慮する必要性が出て来ている。特に赤ちゃんは皮膚が大人と比較してデリケートで紫外線照射を十分気を付ける必要がある。
紫外線が肌照射された際、周りの酸素を励起して一重項酸素やスーパーオキシドを経てヒドロキシルラジカルといった活性酸素を生成する。これら活性酸素種は、肌細胞を攻撃し上記のような肌劣化や肌老化を引き起こす。よって、このように肌を紫外線から守るスキンケアを目的とした基礎化粧品は需要が増す一方である。
フラーレン含有化粧品原料“フラーティクル”
図1:フラーティクルのUVスペクトル
フラーレン(C60)は、図1のように紫外線領域に特徴的な吸収を有している。UVAからUVCまで優位な吸収を持っているため、フラーレン(C60)はUV吸収を目的とした応用へ適した素材である。このフラーレン(C60)が肌に存在していた場合、紫外線照射によって引き起こされる活性酸素発生の抑制を実現して健全な肌の維持が期待できる。このような抗酸化特性を有したフラーレン(C60)含有基礎化粧品原料の開発が求められていた。
株式会社ビオシスが製造する水溶性フラーレン(C60)含有の化粧品原料“フラーティクル”は、フラーレン(C60)固有の抗酸化特性を保持して水溶性といった肌に馴染みやすい特徴がある。そのため、スキンケア後に肌に留まったフラーレン(C60)による紫外線対策を可能とする。(図2)。
図2:フラーティクルのUV防御イメージ
社内で実施した紫外線防御効果評価では、UVA防御を示すPA(Protection Grade of UVA)とUVB防御を示すSPF(Sun Protection Factor)について、市販品のUV化粧品に所定量のフラーティクルを混ぜてそれらの値の上昇度合を比較した。0.01w%相当のフラーティクルを混合させた結果、PAが1.25倍、SPFが1.72倍に上昇する結果を得ている。